ろぽん日和

気ままに雑記ブログ

平成ネット史(仮)の懐かしさと時代の進歩について

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www4.nhk.or.jp

 年始にNHKで放送されていた前後編に分かれて放送されたネットの平成史。

 テキストサイトの大家『侍魂』の健さんが出ると聞いて楽しみに視聴したのですが、健さんのインタビューだけでなく、全体を通して懐かしかったですね。

 2時間じゃあ語りきれない情報量でした。

 見落とした人や見てみたい人は再放送が2019年1月12日(土)午後2時~4時で前後編放送されますので、要チェックです。

 

 番組を見ていると思い出します。

 ネット黎明期の電話回線に繋がる「ピーピロリ―」というあの音。

 ダイヤルQ2にかかって焦ったあの頃。

 野々村病院の人々を親の目をかいくぐり、深夜にこっそりとやっていたあの時。

 思い出すとろくでもないことをしていた気がしますが、パソコンとネットが家庭にやってきた1990年代の胸の高鳴りを今日のことのように覚えています。

 

 2002年にはブログがはじまって、2019年にも一部ではオワコンだなんだといわれながら、まだ続いているのがすごいですね。

 

 改めてネット史をみてみると、新しいサービスに更新されるスピードの早い事、早い事。snsでいうとmixiとかすごく懐かしく感じてしまいましたよ。招待メールくれくれ合戦がすごかった時を思い出します。あと、あの時代コミュニティもあったりして、オフ会とかも多かったよな~とか。

 

 モバイル機器の時代に入るとiモードや絵文字の登場、写メールとかがとても懐かしく、もう戻ってこない時間なんですよね。本当ネットにまつわるものって時代の流れがはやいです。人間って根源的にどれだけコミュニケーションの進歩を渇望する生き物なんでしょうね。

 

 かつての『ブログの女王』真鍋かをりがいってましたけど、自分のまわりの四十代はsnsなどに疲れてしまって、距離を置く人が多くなってきていると言ってましたけど、これから先の未来、情報の世代間格差って加速度的に開いてくると思います。

 

 iPhoneの登場によって、モバイルの利便性が飛躍的に向上して、PC端末として当たり前のように使用していますけど、これを生まれた頃から使用している人類とそうでない人類とでは感覚的な用途がまるで違ってくるんでしょうね。

 そういえば番組内で今の子どもはテレビに対してスワイプしたりするといってましたね。

 きっとイノベーションは加速していって、もっと感覚的に、もっと違和感なく、もっと早く、もっと情報量の多い端末が開発されていく事になって、それを幼少期から使っている世代とは、現行のミドルエイジなんてついていく事ができなくなる時代に突入するんだろうなと、ちょっと慄いています。

 どうあがいたってこの流れは止められないし、きっとどこかではついていけなくなるんだろうな~と。昔はおばあちゃんの知恵袋的なものが大事にされたんでしょうけど、今ではグーグルで検索してしまうように、どんどん年寄りの価値って、なくなっていくんだろうなと思います。

 こうなると少子高齢化なのが皮肉にも救いになるところがあるのかなと思ったりしますが、それは現実逃避ですね。少子高齢化は末期的な状況だと思うので。

 すごく便利な時代にうまれた半面、経験したことが後世に通用しづらい時代にうまれたので、寿命も延びているし、生き方を問われ続けていく気がします。

 こんな時代だからこそ、普遍的なものをしっかりと捉えながら、時代のニーズを見失わないようにしたいと思いつつ、それさえ社会や世間にそう強制されているのかもしれず、悩む今日この頃です。

 本音はもっと楽して生きたいですね!笑っ

【書評】ドキュメント戦争広告代理店 情報操作とボスニア紛争

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 ろぽんでございます。

 元NHKディレクター高木徹の書著、NHKスペシャル『民族浄化~ユーゴ・情報戦の内幕~』の取材を元に書かれた本です。ボスニア紛争における情報戦争の裏幕。アメリカのPR会社が果たした役割を描いています。

 

 

 

物語の概要

 「情報を制する国が勝つ」とはどういう

  ことか――。世界中に衝撃を与え、

  セルビア非難に向かわせた「民族浄化」

  報道は、実はアメリカの凄腕PRマンの

  情報操作によるものだった。国際世論を

  つくり、誘導する情報戦の実態を圧倒的

  迫力で描き、講談社ノンフィクション賞

  新潮ドキュメント賞をW受賞した傑作!

 

 

 ボスニア・ヘルツェゴビナ共和国ハリス・シライジッチ外務大臣とアメリカの大手PR会であるルーダ・フィン社ワシントン支社ジム・ハーフ国際政治局長との会合から旧ユーゴスラビア内戦の勝敗を左右する『情報戦』の第一歩がはじまります。

 この当時、指導者チトーの死去と共に四十年あまり存在していた社会主義国ユーゴスラビア連邦は崩壊。冷戦崩壊もあり民族独立の機運が高まり、スロベキアが独立、次にクロアチアが独立しました。連邦国を牛耳っていたセルビア人は自らの権威を守るため、各連邦の共和国の民族と争っていました。

 独立して間もなく核も石油もないモスレム人の国、ボスニア・ヘルツェゴビナ共和国はこの紛争を生き抜くために諸外国との折衝をもちますが、国連に影響力のある大国に対して、交渉力をもちません。

 そこで登場するのがアメリカの大手PR会社であるルーダ・フィン社となります。

 同社のハーフが得意とするのは外国の政府、国家をクライアントとし、国益を最大化することです。貿易振興や観光誘致といった仕事もありますが、戦争というもっとも大きな国益がかかる場面で、その政府にかわってPRを担当することです。

 ハーフが担当することにより、シライジッチは鍛えられ広告塔に。アメリカの政治、国務省やアメリカの大手新聞社、メディアに対して接触をはかり、はては国連を巻き込み、ボスニア紛争を世界世論で無視できないところまでもってきたうえで、『モスレム人=被害者』『セルビア人=加害者』という構図を作り上げ、『民族浄化』という血みどろのキャッチコピーが産み落とされることになります。

 

最後に

 グローバリズムの波は紛争や戦争といったところにも波及し、それさえ影響を及ぼしえるのがアメリカの一企業なのかと愕然とする内容です。実際の国家の戦力という「実」とは別に情報戦やPRにおいて「虚」の戦いがいかに趨勢を判断する上で重要かを示しています。戦争を今までと異なった角度から知ることができるので、一読するに値する本だと思います。とても業が深い考えさせられる本です。

 

 

 合わせてお読みください。

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【書評】聖の青春

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 ろぽんでございます。

 松山ケンイチ主演で映画化された難病と闘い続け29歳でこの世を去った希代の天才棋士、村山聖のノンフィクション本です。著者は大崎善生で本作がデビュー作となり、妻も女流棋士となります。

 読んでいる時に伝わってくる熱量がすごいものがある本です。

 

 

 

物語の概要

 重い腎臓病を抱え、命懸けで将棋を指

 す弟子のために、師匠は彼のパンツを

 も洗った。弟子の名前は村山聖。享年

 29。将棋界の最高峰A級に在籍したま

 まの逝去だった。名人への夢半ばで倒

 れた“怪童”の一生を、師弟愛、家族愛

 、ライバルたちとの友情を通して描く

 感動ノンフィクション。

 第13回新潮学芸賞受賞作

 

 

 幼少期に腎ネフローゼを患い、長い入院生活を余儀なくされる。

 明確な治療法がなく、安静にしなくてはならい聖を不憫に思い、父親が買ってきた将棋に没頭していきます。この将棋というゲームをもっと探求したいと、母親にねだって将棋の本を買ってきてもらいます。

 この本は『将棋は歩から』といって加藤次郎名誉九段の著作で初心者向けではありますが、駒の効率性を説いたり、難解な言い回しで表現されていたりしました。それを定石も詰将棋もわからない6歳の漢字の読めない子どもが食い入るように何度も理解できるまで読みふけったそうです。将棋に対する情熱がこの頃から、常人とは一線を画しています。

 療養しながら広島の将棋教室でめきめきと強くなる聖少年。敵がいなくなり大阪奨励会いりを強く懇願し、反対する家族を魂をしぼりだすような言葉で説得します。

「谷川を倒すには、いま、いまいくしかないんじゃ」

 当時の名人位である谷川棋士を倒すには、奨励会からプロになるのに5年、A級に到達し名人戦に挑戦できるのは最短で5年。中学一年生の聖がそこに到達するには23歳になってしまう。腎ネフローゼを患った聖にとっては遅すぎるくらいだったのです。

 そこまでの覚悟を中学一年生にして持っていた。その道に殉じる覚悟が、今後の熾烈な人生においても聖を前へ前へと進ませていくことになります。

 その聖を誰より支えたのが師匠の森信雄です。

 普通は弟子が師匠の世話をするのですが、この二人の場合は師匠が弟子の世話をしています。それだけ聖の可能性を信じ、聖という人間を受け入れいていたんですね。

 この先の話は本書に譲りますが、一生を懸けて費やした人生のきらめきがこれでもかと詰められた本です。

 

物語の魅力

 とにかく29歳という人生の中で、病魔という嵐にさらされながら、それでも我が道を進んでいく意思の壮絶さに、心の深い部分が熱くなる本です。苛烈でけれど繊細で、人生を将棋に捧げながらも、遊ぶことにも一生懸命で、夢を語り、儚さを知りながらも、前に進もうとするその意思がとても尊い。

 これは一人の人間の魂を刻み込んだ奇跡のような生き様を描いた本です。

 

 

 合わせてお読みください。

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【書評】戦争における「人殺し」の心理学

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 ろぽんでございます。

 米国陸軍中佐でウエスト・ポイント陸軍士官学校心理学・軍事社会学教授であるデーヴ・グロスマンの著作『戦争における「人殺し」の心理学』の紹介となります。

 人が人を殺すメカニズムに対して、中世からベトナム戦争までを紐解き、メディアとゲームの事にまで触れています。

 

 

 

物語の概要

 本来、人間には、同類を殺すことには強烈な抵抗感

 がある。それを、兵士として、人間を殺す場として

 の戦場に送りだすとはどういうことなのか。どのよ

 うに、殺人に慣れさせていくことができるのか。そ

 のためにはいかなる心身の訓練が必要になるのか。

 心理学者にして歴史学者、そして軍人でもあった著

 者が、戦場というリアルな現場の視線から人間の暗

 部をえぐり、兵士の立場から答える。米国ウエスト・

 ポイント陸軍士官学校や同空軍士官学校の教科書と

 して使用されている戦慄の研究書。

 

 

この書籍のポイント

  •  人間に生来備わっている同種殺しに対する抵抗感を数世紀に渡り軍が開発してきた心理的機構。
  •  戦争において残虐行為が果たす役割と軍の力の増強と欠陥のメカニズム。
  •  戦闘での殺人に対する感情と反応の段階、その代償について。
  •  殺人への抵抗感を克服するための条件付けの技術について。
  •  ベトナム戦での米兵の心理操作による大量殺人。戦士社会の浄めの儀式の心理的拒絶。社会からの非難。帰還兵300万と家族の悲劇がなぜおこったのかの研究。
  •  マスコミや対話型テレビゲームによる子どもに対しての殺人の条件付け。軍の条件付けと酷似している。違うのは安全装置が存在していないこと。その点についてもみていく。

 

最後に

 ナポレオン時代やアメリカの南北戦争時代を例に出し、人が人を殺す事がいかに心理的に難しいかをといている。武器の殺傷力や命中率、砲撃の時間から殺人数の実績とを比較して論証している。作者曰く多くの場合、人は人に銃口を向ける事を忌避するようです。また、大砲の登場で殺傷率が飛躍的にあがることも記されています。

 なんの訓練も行わない発砲率は15%これが条件付けの訓練が洗練されていき、朝鮮戦争では50%を超え、ベトナム戦争では90%を超すことになります。詳細は本書に譲りますが、そのメカニズムは現在の社会では平然と行われている行為の一部だということになっているのが本書の恐怖です。

 忌避するような書籍の題名ですが、死生観を考える際の助けの一端になるうる本だと思うので、読んでみて損はないと思っています。

 

 

【書評】know

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 ろぽんでございます。

 今回はコアなファンが多い野崎まど作品です。

 『[映]アムリタ』、『舞面真面とお面の女』『死なない生徒殺人事件』『小説家の作り方』、『パーフェクトフレンド』『2』に代表される天才シリーズが有名ですね。

 『know』は少々趣が異なりますが、こちらでも天才が登場します。

 ただ、物語の行きつく先がぶっ飛んでいてSF小説の代表的なレーベルであるハヤカワ文庫から出版されているのが納得の作品です。

 

 

 

物語の概要

 超情報化対策として、人造の脳葉

 〈電子葉〉の移植が義務化された

 2081年の日本・京都。情報庁で働

 く官僚の御野・連レルは、情報素

 子のコードのなかに恩師であり現

 在は行方不明の研究者、道終・常

 イチが残した暗号を発見する。そ

 の‘啓示’に誘われた先で待って

 いたのは、ひとりの少女だった。

 道終の真意もわからぬまま、御野

 は「すべてを知る」ため彼女と行

 動をともにする。それは、世界が

 変わる4日間の始まりだった――

 

 

 連レルの優秀さを描きながら〈電子葉〉の世界を描いています。〈情報材〉で満たされた世界は〈電子葉〉により、あらゆる事が検索可能な社会になっています。――社会としてその情報開示性や秘匿性にはレベルが存在し、レベル0から6までに分類され、レベル0には一切のプライベートがなく、すべての情報が開示されます。そして〈電子葉〉を開発した常イチが失踪前に残したレベル5を目指せという言葉通り、レベル5に達した連レル。

 常イチが残した暗号を解き、十四年間失踪していた恩師と再会します。十四年間の疑問が解消され、大きな謎を残し、少女、道終・知ルを託されます。

 四日間だけの保護を願う知ルは〈電子脳〉ではなく〈量子脳〉を持つ天才を超えた怪物です。未来予知にも等しい計算能力を持ち、知ルにとっては〈電子脳〉を持つ人間さえ、一つの情報端末でしかありません。人の心どころか全ての情報を吸い上げる。

 この世界で『全知』を許された唯一人の存在です。

 その彼女が到達する四日後の新たな世界とは?

 

物語が伝えてくれるもの

 天才が出てくるのは野崎まど作品らしいのですが、天才から引き継がれた世界を変革させる怪物が行き着く先まで、SF世界で描き切っているところが面白いです。いうなれば最後のオチをみせる為に、登場人物たちが存在するといっても過言ではありません。

 ハヤカワ文庫の中でも軽快な話だと思うので、一般的にも手に取りやすくおすすめですよ。

 

 

 SF本です。合わせてお読みください。

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【書評】きみに読む物語

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 ろぽんでございます。

 今回は映画で有名なニコラス・スパークスの『きみに読む物語』の紹介となります。

 帯の「ボロボロ泣きました。キーワードはないのに、じわじわきます」というように感動の恋愛小説です。

 

 

 物語の概要

 療養施設で老人がアルツハイマー病の老婆に対して奇跡を願い、ある物語を語りだすところから始まります。

 それは1946年のニューバーンを舞台とし、長くある意味では平凡で情熱的な物語。

 31歳のノアは終戦後に古い廃屋を買い取り、十一ヶ月と一財産かけて修理した。その出来栄えは新聞社の記者が取材にきて記事にしたほどでした。

 家の前にあるノースカロライナの森は美しく、広がる川面も静謐です。

 その家で愛犬とともにまるで老人のような日々を過ごすノア。

 ただ漫然と日々を過ごす中で思い出すのは若かりし頃の一夏の事です。

 

 田舎町で過ごす平凡な青年ノアが長期休暇で別荘にきた美少女アリーに一目惚れします。立場の違う二人が惹かれ合いますが、材木屋で学歴のないノアはアリーの両親に認められる事はありません。廃墟での契りとともに、一夏の思い出としてアリーは去っていきます。

 

 29歳になったアリーには弁護士のロンという結婚式を目前に控えた婚約者がいました。ある日みた新聞記事にあの夏の想い人ノアを発見します。今でも想いを残すアリーはいてもたってもいられずニューバーンへと一人やってきます。

 ノアとの再会を果たし、その後、二人の恋路はどう結末を迎えるのか。

 そして老人とアルツハイマー病の老婆が起こす奇跡とはなんなのか。

 

 物語が伝えてくれるもの

 貧乏な青年と裕福な少女が一夏の恋をして、それが忘れられずお互い大人になって再開し恋の炎を再燃させる話。これだけ聞くとよくあるような話なのですが、これをその後の話、人生を通して描けばどうなるか。寿命が延びた現代医学でも、多く発病するアルツハイマー病という現実でも起こりえるシチュエーションで物語を書ききったらどうなるかをやりきった作品だと思います。

 その最後は物語だからこそ美しく帰結します。

 そしてそれだけでは終わらず、そこで表現されるはかなさは読者に対して、共感を誘います。物語の筋はみえやすい構造をしていますが、それでも続きをよみたくなる。この二人の恋の行く末を人生を見守りたくなる作品です。

 映画の方が時系列はわかりやすくされていますが、小説も心理描写や風景描写が優しく繊細で一読の価値ありです。

 恋愛小説を人生の行く末まで描き切った名作だと思うので、恋愛小説好きでまだ未読の方はおすすめできます。