【書評】戦争における「人殺し」の心理学
ろぽんでございます。
米国陸軍中佐でウエスト・ポイント陸軍士官学校心理学・軍事社会学教授であるデーヴ・グロスマンの著作『戦争における「人殺し」の心理学』の紹介となります。
人が人を殺すメカニズムに対して、中世からベトナム戦争までを紐解き、メディアとゲームの事にまで触れています。
物語の概要
本来、人間には、同類を殺すことには強烈な抵抗感
がある。それを、兵士として、人間を殺す場として
の戦場に送りだすとはどういうことなのか。どのよ
うに、殺人に慣れさせていくことができるのか。そ
のためにはいかなる心身の訓練が必要になるのか。
心理学者にして歴史学者、そして軍人でもあった著
者が、戦場というリアルな現場の視線から人間の暗
部をえぐり、兵士の立場から答える。米国ウエスト・
ポイント陸軍士官学校や同空軍士官学校の教科書と
して使用されている戦慄の研究書。
この書籍のポイント
- 人間に生来備わっている同種殺しに対する抵抗感を数世紀に渡り軍が開発してきた心理的機構。
- 戦争において残虐行為が果たす役割と軍の力の増強と欠陥のメカニズム。
- 戦闘での殺人に対する感情と反応の段階、その代償について。
- 殺人への抵抗感を克服するための条件付けの技術について。
- ベトナム戦での米兵の心理操作による大量殺人。戦士社会の浄めの儀式の心理的拒絶。社会からの非難。帰還兵300万と家族の悲劇がなぜおこったのかの研究。
- マスコミや対話型テレビゲームによる子どもに対しての殺人の条件付け。軍の条件付けと酷似している。違うのは安全装置が存在していないこと。その点についてもみていく。
最後に
ナポレオン時代やアメリカの南北戦争時代を例に出し、人が人を殺す事がいかに心理的に難しいかをといている。武器の殺傷力や命中率、砲撃の時間から殺人数の実績とを比較して論証している。作者曰く多くの場合、人は人に銃口を向ける事を忌避するようです。また、大砲の登場で殺傷率が飛躍的にあがることも記されています。
なんの訓練も行わない発砲率は15%これが条件付けの訓練が洗練されていき、朝鮮戦争では50%を超え、ベトナム戦争では90%を超すことになります。詳細は本書に譲りますが、そのメカニズムは現在の社会では平然と行われている行為の一部だということになっているのが本書の恐怖です。
忌避するような書籍の題名ですが、死生観を考える際の助けの一端になるうる本だと思うので、読んでみて損はないと思っています。