【書評】きみに読む物語
ろぽんでございます。
今回は映画で有名なニコラス・スパークスの『きみに読む物語』の紹介となります。
帯の「ボロボロ泣きました。キーワードはないのに、じわじわきます」というように感動の恋愛小説です。
物語の概要
療養施設で老人がアルツハイマー病の老婆に対して奇跡を願い、ある物語を語りだすところから始まります。
それは1946年のニューバーンを舞台とし、長くある意味では平凡で情熱的な物語。
31歳のノアは終戦後に古い廃屋を買い取り、十一ヶ月と一財産かけて修理した。その出来栄えは新聞社の記者が取材にきて記事にしたほどでした。
家の前にあるノースカロライナの森は美しく、広がる川面も静謐です。
その家で愛犬とともにまるで老人のような日々を過ごすノア。
ただ漫然と日々を過ごす中で思い出すのは若かりし頃の一夏の事です。
田舎町で過ごす平凡な青年ノアが長期休暇で別荘にきた美少女アリーに一目惚れします。立場の違う二人が惹かれ合いますが、材木屋で学歴のないノアはアリーの両親に認められる事はありません。廃墟での契りとともに、一夏の思い出としてアリーは去っていきます。
29歳になったアリーには弁護士のロンという結婚式を目前に控えた婚約者がいました。ある日みた新聞記事にあの夏の想い人ノアを発見します。今でも想いを残すアリーはいてもたってもいられずニューバーンへと一人やってきます。
ノアとの再会を果たし、その後、二人の恋路はどう結末を迎えるのか。
そして老人とアルツハイマー病の老婆が起こす奇跡とはなんなのか。
物語が伝えてくれるもの
貧乏な青年と裕福な少女が一夏の恋をして、それが忘れられずお互い大人になって再開し恋の炎を再燃させる話。これだけ聞くとよくあるような話なのですが、これをその後の話、人生を通して描けばどうなるか。寿命が延びた現代医学でも、多く発病するアルツハイマー病という現実でも起こりえるシチュエーションで物語を書ききったらどうなるかをやりきった作品だと思います。
その最後は物語だからこそ美しく帰結します。
そしてそれだけでは終わらず、そこで表現されるはかなさは読者に対して、共感を誘います。物語の筋はみえやすい構造をしていますが、それでも続きをよみたくなる。この二人の恋の行く末を人生を見守りたくなる作品です。
映画の方が時系列はわかりやすくされていますが、小説も心理描写や風景描写が優しく繊細で一読の価値ありです。
恋愛小説を人生の行く末まで描き切った名作だと思うので、恋愛小説好きでまだ未読の方はおすすめできます。