ろぽん日和

気ままに雑記ブログ

【書評】僕の死に方 エンディングダイアリー500日

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 ろぽんでございます。

 流通ジャーナリストとして、テレビやラジオに引っ張りだこだった金子哲雄のエンディングダイアリーです。

 四十一歳で肺カルチノイドで急逝した筆者の思いのつのった書籍となります。

 

 特殊な病名について

 『肺カルチノイド』は10万人に1人に発病し、筆者の『組織型』になると数千万人に一人という、専門的な論文も数本しか存在しない、大変珍しい病気です。がん同様、悪性腫瘍が体を蝕み、治療法もがんと同様で、手術、抗がん剤、放射線の3大治療となるのですが、筆者の場合それでは治癒できない難病でした。

 発見当初から、すでに肝臓や骨にも転移しており、かつ肺の中に9センチの腫瘍が存在し、いつ窒息死してもおかしくない状況でした。

 

 流通ジャーナリストとしての生き様

 流通ジャーナリストとしての生き方を高校2年生の時点で意識しており、人生をそれに沿う形で、大学、就職、独立を目指して、人の2倍のスピード、2倍の濃さで突き進んでいきます。文章から垣間見える「人に喜んでもらいたい」という熱いおもいが生来の心根として読み手に訴えかけてきます。

 ああ、この人はなるべくして、なりたい自分になったのだなと、納得させられます。

 市井の人、特に主婦を対象に、スーパーの刺身の値段から、今の経済状況を説くことができる。大衆の視点から、常に意識して、現場に通い、喜ばれる情報を届ける姿勢はブロガーとしても大変、勉強になることです。

 週刊誌のキャッチコピーも愛読しており、ここから鋭い感性が磨かれ、生涯において付き合いのあった女性セブンとのやりとりにも両社(者)間での愛を感じました。

 自分がもう幾ばくも生きていけない状況でありながら、それを公表せず、明るく分かりやすい『グッドパフォーマンス』を最後まで披露し続けた胸のうちは、人に今どう生きるかを否応なしに問いかけるようでした。

 

 世にも珍しい死後のプロデュース

 血管内治療の権威 堀先生に肺カルチノイドのオペを行ってもらい、大阪にあるクリニックにてIMRT(強度変調放射線治療)で転移したがんを叩き、これ以上のがんの広がりを防ぐため自宅近くの東京で野崎先生と嵯峨崎さんに化学療法を行ってもらう。

 けれど、やはり病魔は体を蝕み、筆者は自分の死後について、率先的に動きます。

 遺産整理には闘病をともにする妻への思いにあふれ、葬儀については関係者に対しての気遣いにあふれています。「感謝のキャラバン」などは筆者の葬儀が遠方に来れない方のために考えられており、その思いの深さや筆者の死後まで、「みんなに喜んでもらいたい」という思いに胸を打たれます。

 

 最後に

 筆者の生き様をみせつけられ、今この瞬間をどう生きるかを考えさせられる書籍になっています。長く生きる。短く生きる。それは人は選べないけれど、日々をどう生きるか、自分の与えられた人生の中でどう生き抜くかは選択できるのだということを示されています。

 あとがきに筆者の妻、金子稚子の言葉も夫婦としてのありようを考えさせられます。

 人生に迷いを感じている方は、一読すれば、心に届くものがある書籍になっていますので、どうかあなたの人生の灯になる一冊になることを願っております。