【書評】「ものづくり」の科学史 世界を変えた《標準革命》
ろぽんでございます。
東京大学総合文化研究科教授・橋本毅彦の著作『標準』を軸にした世界史です。
どのように『標準化』と『互換性』がなされたのかを歴史的に描かれています。
物語の概要
「互換性」は技術者の壮絶な工夫と苦労の結晶であ
り、企業と権力の構想と交渉によって誕生した。
標準技術の形式と受容過程の、驚くべきドラマの
数々。標準化=製造の革命は、旧体制を破壊し、
軋轢も生んだ。A4、飛行機の安全基準、コンテナ
、キーボード……。今なお世界を覆い尽くさんと
進む未完の巨大プロジェクトの意味と歴史と未来
を探求する。
18世紀のフランスにて独立後まもないアメリカ合衆国から派遣されたトマス・ジェファーソンは小銃工場において、新式の製造法で造られたマスケット銃の視察にきていた。その銃は例のない互換性のある部品で構成されていました。
当時はあらゆる工業品に関しては互換性はなく、ヤスリがけを行って調整されていました。
この互換性の技術があれば、部品の修理は容易であると理解したトマスは自国でもこの新式の製造法を取り入れようとする。これがアメリカの兵器廠で育て上げられ、『アメリカ式製造法式』として確立されていく事になり、リボルバーを生み出し、後のフォードの大量生産方式に結実していく事になります。
互換性部品を製造するという事は、工作機械の発展と同義となります。
また、均一な製品の製造には製造方法についても、標準化が促進されていく事になるのですが、それは職人第一主義の工場において、大きな軋轢を生み出すことになりますが、それを乗り越えていきます。
一定の形とサイズをしている部品が、同じモデルの部品と交換できることが部品の互換性でした。異なるモデルにおいては当然交換ができません。それでは困るような部品、『ネジ』が異なる部品においても互換性を確立させていく『標準化』または『規格化』が促進されていく事になります。これが後に公的機関によって標準を設定しようとする『デジューレ・スタンダード』の源流となります。ちなみに市場競争によって決定される標準を『デファクト・スタンダード』といい、こちらの話も後半に触れらています。
最後に
ものづくりに携わる人たちにとって、JIS規格やISOなどをより深く知る助けとなりますし、製造工程の歴史と現代を知る為の道標にもなります。やすりがけのような手作業の調整作業は現代でも残されており、プラント事業や造船業、鉄道車両などでいまだ活かされている技術です。しかしその中でも多くの部品や工程は標準化されており、モジュール工法の開発など、日々、工法はアップデートされています。
自分たちの技術がどこから来たものなのかを知ることは未来へと続くことにもなりますので、ものづくりに関心のある方は一度手にって損のない良書となります。
合わせてお読みください。