バスと我輩とトイレ
バスの広告にある文字を追って視線を横にずらしていく。
ブログを更新する身の上で見出しやキャッチーな言葉というのを日々勉強せねばならない。
一巡すると、視界の隅にうつるイケメンの横顔が気になった。
長いまつ毛がふせられ、憂いを含んだように、そっとため息をついた。
非常に情緒的に見えるのがなんか、腹が立つ。
どうせ、腹減ったなー、今日はなに食べようかなー、とかどうでもいい事を考えているに違いない。
のほほんっと一日を過ごし、ふわふわした女子に囲まれ、うふふな日々に浮かれ、女子との甘い一時を謳歌しているのだろう。
女を千切っては投げ、千切っては投げとしているにちがいない。
そういった極悪で、インスタント的に食い散らかす所業は是非おすそ分けして頂きたいところではあるのだが……。
世の中というのは、一部のモテ属性の奴にみんな群がって、その他大勢の人間は常に飢えている。
若い男なんて常にサルみたいなもので、余裕もないから、余計もてない気がする。
おまけに我輩みたいな豊満なボディーだと熟れ過ぎていて、誰も収穫に来てはくれないのである。
その上、目がねで天然パーマとか、誰が我輩に愛をくれるんですか?
まあ、しかし、いいのだ。
齢20を迎え自分という青い果実のまま熟れさせ続ける、この社会にようやく慣れた頃だ。
どうにもならないこの世界の事など、放っておいて2次元に目を向けよう。
今期アニメの我輩の嫁をブログで更新し、我輩も2次元の女を千切っては投げ、千切っては投げを繰り返すのだ。
そうしたところで現実と違って二次元では傷つくものはいない。
たまに我輩の嫁をブログで叩きにくるいかれた奴がいるが、そういう奴はSNSアカウントを探し出し、叩きまくって、炎上の嵐の中で灰にしてやるけども。
後、2次元のいいところは誰かと共有しても、自分だけのものでもあるのだ。
これって不思議なもんである。
アイドルも近いかもしれないが、奴らは必ず男の影を心配しなくてはならず、後々誰かと内緒で付き合ってたとか分かったりロクな事がないのだ。裏の顔を常に想像してしまう。リアル怖い。
2次元は作者やアニメスタッフがおかしな事をしなければ、裏切られる事はない。たまに中の人がとんでもない事をしでかす事があるが、あれはまあ、うん、許せないよね?
あれ? 2次元も意外と救いがない?
いやいや、まあまあ、なら原作ファンが最強かもしれん。
インスタントに恋をさせてくれる量産型萌えクリエイターの偉業が今日の我輩のような存在に生きる糧を与えているのだ。
あの人たちは本当に神だ。
この捻じ曲がった情念を昇華する聖典の書き手である。
2次元御用達のブログを細々と続けているライターの端くれたる、我輩としては憧れることを禁じえない。
そういった仕事につきたいという欲求はある。
しかし、大学3年目である今の時分、就職をそれなりに真面目に考えていかなくはてはならない。
来年から就職活動がはじまる時になにを優先するかなのだが、この豊満なボディーを維持する為にどれくらいのカロリーという名のお金を稼ぎ出さなくてはならないか。
また、新たな嫁との出会い、1クールが終わっても嫁であり続けるヒロインに対してのお布施活動をやめる訳にはいかない。
死活問題である。
その為、ほんとんどお金にならないクリエイター業を生業にするのは難しい。
今はどうやって社会人として、2次元に貢献していくかというのが今後の我輩の課題だ。
ちなみにつらつらと書き連ねているが結局こうやって話のオチなどなく、思考を垂れ流しているに過ぎない。
なぜか?
それは今、全力でトイレにいきたいからです。
本当スイマセン。
なんかとりあえず考えてるフリして、イケメン憎んで、2次元を愛してたら、気がまぎれて、現実の苦痛を忘れられると思ったんです。
はやく目的地について下さい。
近くに小売店はあるのにバス停はないってどういう事でしょうか。
決壊しそうな不協和音が胃腸を駆け巡る。
破滅……! 破滅が近い!
やはり現実は我輩には厳しいものである。