ろぽん日和

気ままに雑記ブログ

バスと俺と供養

久しぶりのバスに乗ったわけだが、イライラする。

ベットタウンをちんたらと走るこのスピードにうんざりだ。

丘をぐんぐん降って行くロードバイクに負けるなよといいたい。

 

俺は早く家につきたいんだ。

 

さっき軽く缶ビールを一杯飲んだけど、下らないテレビ番組をみて、何も考えず酒をあおって、そのまま寝こきたい。

風呂はめんどうくせーから朝だな、朝。

 

前の方でガキがなんか甲高く話してやがるが、ガキが元気なのは結構なことだから、まあ、それはいい。母親がすまなそうにしてるから許せるってもんだ。

 

暗くなり始めた窓の外を見るともなしに見る。

太陽はもう沈んで、タールみたいなカーテンがかかった空がどうにもはまりすぎてる。

まるで俺の人生みたいでな。

 

さっきプロダクションとの契約が切れた。

芸能生活とおさらばだ。

 

つってもテレビとかに出てたわけじゃなくて、地方のどさまわりの営業で、よく分からんモノやサービスのMCとして、ひっそりと生活していた訳だが。

元々は売れない役者だったんだが、日銭稼ぎが続いてて、いつのまにか演劇より、プロダクションが紹介してきた仕事がメインになっていった。

 

で、そうなるとある日、やっぱ思う訳よ。

俺なにしてんだろ?って。

 

初めの頃はな、こういうのも今だけだ、こういう仕事もなにかにつながって自分のパトロンができるかもしれないとか思って、ちゃんと取り組もうとしてたし、夜遅くに演劇の勉強なんかもしてたんだよな。

 

けどな、人間慣れって怖いもんで、始めはまごついてたMCもそれなりにできるようになってきて、こんなもんだと分かり始めたら、知らずに手を抜き出す。

でも営業の経験値は溜まっていく訳だから、要領よくこなしているようにも見える訳よ。実際受けはそんなに悪くなかったしな。

で、大体、あの客に呼ばれればこれくらいで、このイベントならこれくらい、これくらいの箱ならこれくらいって、そろばんも弾けるようになってくる。

「また、頼むよ」なんかも言われたりする様にもなって、お得意さんもできてくる。

定番のイベントなら声がかかるようになり、時間の使い方やゲストや催し、紹介するモノやサービスの説明がスムーズになっていく。そうするとギャラもあがって、いい気分にもなってくる。

そうして目の前の事が順調になり始めると次第に夢と現実がすり替わってくる訳だ。

 

そしてある日突然思うわけよ。

あれっ、俺ここでなにしてんだろうって?

 

それなりの金がもらえて、飯が食えて、それで?って感じだ。

俺は一体なにになりたかったんだっけってなっちまったんだよな。

この前、プロダクションの後輩が俺と同じ仕事をしていて、飲みに行ったら、当時の俺と同じ様な事をいってて思い知らされたわ。

 

ああ、俺ってとうに終わってたんだなって。

 

15年くらいなにしてたのか。

小銭稼ぎばっかにいそしんで、15年前の俺にかける言葉がみつからない。

 

もうとっくに俺が役者を諦めてたという事をつきつけられた。

そう思ったらやってられねーよな?

MCの仕事なんて。

もうできねーっつうの。

 

そんなかっこつけた理由だけじゃなくて、現実問題、ああいう営業まわりの仕事だって年をとりすぎたらとりすぎたで、若い奴に今度は仕事がとられていく。

俺を気に入ってくれたお客さんだって、イベントの担当から外れていったりする。

全て一新されていく。

 

あの後輩が俺と同じ道に進むのか、ちゃんと役者として売れるのかは知らんけど、俺と似たような奴らはわんさかいる訳だから。

その事も自覚させられた。

 

俺は敗者だ。

 

もっと早くその事を自覚するべきだった。

その辺をごまかしてきたから、この年で人生急カーブになる訳だ。

 

これから先どうなるかはわからん。

 

そんな事は今まで自分の事に無責任だった俺がわかるわけがねぇ。

とりあえず酒をあびるほど飲んで、明日の自分に全部丸投げしてやる。

頭痛でそれどころじゃないかもしれんが。

今日はもう俺の人生に空白をいれてやる。

ごちゃごちゃ考えるのはその後だ。

 

とりあえず今日はエセ役者きどりの司会野郎を供養にだす。